「白い巨塔」と言えば 唐沢寿明主演の平成版を思い出す人が多いと思います。
しかし、役者人生をかけた田宮次郎 最期の作品が、昭和テレビ版 「白い巨塔」
題して
「白い巨塔」俳優 田宮二郎 最期の作品
最後までお付き合いいただけたら幸いです。
豪華キャスト
山本學、中村伸郎、小沢栄太郎、加藤嘉、小松方正、太地喜和子、島田陽子
曽我廼家明蝶、金子信雄、辺文雄、佐分利信、米倉斉加年、児玉清、小林昭二
中村玉緒、北村和夫、大滝秀治、山田吾一、夏樹陽子
出演メンバーだけをみてもそれぞれ主役級の役者揃い
これが映画ではなく、テレビドラマという枠組みで毎週放映されていたわけですから
半端ないドラマだと 昭和時代に生きた皆様や昭和の映画を愛する皆様なら
「このキャストって やばくない」
と驚かれると思います。
財前五郎(田宮二郎)
昭和の映画、ドラマの有名俳優 大集合
映画、舞台出身者が多いので演技は、半端なく重厚かつ迫力あり
主役:財前五郎(田宮二郎)と親友:里見脩二(山本學)との医者として信念の対立と友情
財前の愛人 花森ケイ子(太地喜和子)の存在感
里見脩二(山本學)
鵜飼教授(小沢栄太郎)、財前又一(曽我廼家明蝶)、岩田重吉(金子信雄)真鍋貫治(渡辺文雄)の腹黒いとい
うか 財前を利用して自分たちの欲望を画策する人達
どのシーンをとっても役者達の演技に引き込まれるような感覚を覚えます。
物語
物語のあらすじは、平成版を見た人もいつと思いますが
浪速大学医学部では東教授の後任をめぐりさまざまな思惑が交錯していた。東の教え子・財前、退官後の地位確保を狙う東が推す菊川、野坂教授が推薦する葛西。候補者として3人が立つが、権力とカネの力で財前が教授に選出される。
教授になった財前は、名声と権力を手に入れるが、同期生である里見助教授の依頼である胃がん患者を手術し患者を死なせることになる。
遺族側から裁判が起こされた財前 物語は、この裁判を軸に欲の塗れた人々に飲み込まれて行く財前教授と医療の本質に真摯に取り組む里美医師との生き方を対比させ 医療とは何か?を訴えるドラマである。また、大学病院の封建的で閉鎖的な世界を赤裸々に描いている。
かなり誇張していると思いますが、昭和の時代 会社でも同じような状況もあったのでこの時代に生きてきた人にとって なっとくできることもあると思います。
一方、平成、令和の時代からすると「信じられない状況」だと思います。
現在のコンプライアンスでは、あり得ない患者への対応など違和感を持つ人も多いと思います。
このあたりは、「平成版:白い巨塔」では、上手く表現していると思いました。
見どころ
手術シーン
オープニングで描き出される 手術シーンは、本物を撮影した物だそうです。
今どき、テレビドラマでここまで生々しいシーンは、NGだと思います。このドラマにおける手術シーンのほとんどは、医師及び患者の許可を取って撮影された実際の映像である。クレジットタイトルには出てこないが、ロケは神奈川県伊勢原市の東海大学病院で行われた。田宮が同病院と懇意にしていたことから実現したものである。
白い巨塔:オープニング
柳原医師
裁判で最大の鍵を握る柳原医師の医師としての良心に苦しむ姿が生々しく描かれている。
いつわりの証言をしつつ、遺族側の様子を見に行ったり、財前側の計らいで結婚相手まで紹介されるなど医者としての将来を取るかで悩み続ける。
柳原弘(高橋長英)
花森ケイ子
花森ケイ子(太地喜和子)は、財前の愛人でクラブに勤めている。
花森ケイ子(太地喜和子)
元女子医大(中退) 財前の愛人ではあるが、おそらく たったひとりの理解者でもあったろう。
印象的なシーンとして、ケイコの店で財前の学術会議への選挙に懸念をしめしたが、財前は納得せず、里見は店を出る、
その後をケイコが追って 財前を友達として見限らないようにして欲しいと話す。
このシーンで里見は、「財前は友達だ」とケイコに話す。
なんどか見返したシーンですが、財前のことを真剣に心配していることがわかる。
権力志向で豪腕にみえる財前五郎の人間的な弱さを受け止めている花森ケイ子は
「白い巨塔」という壮大な物語のなかで ある意味 財前五郎の心情を視聴者に代わって受け止める役であったような気がします。
財前産婦人科医院
財前五郎は、婿養子である。
財前産婦人科医院という強力なスポンサーを背景に野望を実現していますが、この義父の財前又一(曽我廼家明蝶)の存在がストーリー上で大きな意味を持つ。
物語では、すぐにカネで解決しようとするが、 優秀な婿養子を自分の勲章と言ったり、財前が教授になったときに財前の愛人(花森ケイ子)に「大学教授という物の愛人にこんなところに住ませていてはいかん」と言ってマンションの費用を払ったりなど 今の常識では考えられないと思いますが、当時の金持ちにはこういう人物が多かったような気がします。
また、財前は、愛人がいるという状況でも財前五郎は、家族をとても大事にしている。
また、母親に仕送りをしたり身体を気遣ったりするという人間として優しい一面もあることをわすれてはいけない。
財前又一(曽我廼家明
自殺後の放映
裁判に敗れ 法廷で倒れる財前 彼は、胃がんでしかも手遅れ状態であった。
控訴審敗訴直後に倒れた際には、介抱して胃のX線検査が必要だと告げた里見の手を振り払い、「君の指図は、受けん」と言って失神してしまう(この場面は2003年版にも取り入れられている)。裁判の上告及び手術後の病状進行の描写は割愛され、黄疸発覚後に「教授命令だ、カルテを出せ!」と自らのカルテを婦長の制止を振り切って探す[12]が偽物と確信。財前に涙ながらに哀訴された里見は真実を語らなかったものの、全てを悟った財前は里見に向かって自分の過ちを認め、「君と僕は、同じ教室で学んだ友達じゃないか」と言った里見の手を取り悔恨の涙を流した。その後の死に至る病状悪化も割愛されている。最後に発した「母さん」は演じた田宮二郎のアドリブ
撮影時から田宮次郎は、躁鬱が激しく 撮影が困難だったという。
ラストシーンも3日間絶食しやつれた姿となり、死亡した後のストレッチャーも自ら乗っている。
里美宛ての最期の手紙も自分で書いたそうです。
モーツァルト作曲、レクイエムで解剖室に運ばれて行くシーンは、あまりにも重苦しい。
プロデューサーに「財前五郎の後に、どんな役を演じたらいいかわからない」と言って虚脱状態だったそうです。
1978年12月28日 田宮次郎は猟銃を使って自殺
放送は、まだ2回ほど残っていて ラスト2回は視聴率が上昇し、ラストシーンには、「田宮二郎さんのご冥福をお祈りいたします」とテロップが流れています。
当時、中学生で観ていた自分は、あまりにも暗い終わり方だったので数日間気分が落ち込んでいました。
年齢による感じ方
放送当時、自分は、中学生 親(特に父親)と一緒にみていました
愛人とかよくわからないところもありましたし、料亭でのシーンが多く 意味不明うなところが多かったです。
20歳を過ぎた頃再放送を観たときは、
「自分の父親がガンで亡くなったこともあって」かなり切実な状況でした。
柳原医師について
「バカだなぁ 人生を棒に振って」
「黙っていれば 出世街道ばく進」
とか
里美医師について
「まじめ過ぎる」
「あんな 清廉潔白な人などいない」
「奥さんの気持ちわかる」
「佐枝子さんに あんなこと言われたら 自分はXXXだろうな・・・」
なんて思っていましたが
60歳を過ぎて見直すと
「人の心は、そう単純じゃない」
「財前又一(曽我廼家明蝶)、岩田重吉(金子信雄)真鍋貫治(渡辺文雄)の行動もよくわかる
人は欲望とか権力に弱い」
「花森ケイ子は、まじでいい あのような人に愛されていた財前が羨ましい」
「財前の苦悩がよくわかるようになってきた」
と年代によって感じ方が違っている。
平成版他
唐沢寿明演じる財前五郎も全話拝見しました。
医療の進歩、コンプライアンスなどを上手くクリアしながらつくられた作品でそれは玉のしむことができました。
ただ、花森ケイ子、財前又一、里見医師は、微妙かなと感じた。
特に里見医師の行動が意味不明なところも多い
財前又一は、ふざけすぎ(飽きさせないという演出だと思うけど)で
「人間 カネがあったら 最期は名誉をほしがる」という名台詞もイマイチの感じがする。
唐沢寿明演じる財前五郎は、すごくよい 惜しいのは、もう少し 大柄な男の方がよかったかも
時代と言えば時代で 昭和版を平成の世に放映しても 一般ウケはしないだろうし、抗議も殺到するでしょう。
ギリギリのせめぎ合いということで平成版の白い巨塔は良作です。
令和の時代には、「白い巨塔」のような社会的な作品は、できないだろうね
昭和の人だけではなく 若い人にも観て欲しい
昭和という 混乱と勢いとダークな時代の記録ドラマとして観て欲しいと思っています。
当時は、ガン=死 という状況でいかに医師達が戦っていたのかということが表現されています。
一方、権力、カネ、裏取引というダークな世界もあったことを忘れてはいけない。
学術会員選挙で選挙の投票用紙を集めてきて自分たちで書き込むなんて どうしようもない時代だと思います。
ぜひ 原作も合わせて 「白い巨塔」ご覧下さい。
映画版 NHK BSで放送
田宮二郎主演の映画「
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